天然温泉の効能とは?温泉の泉質と効能を知って健康になろう
2023.09.07
天然温泉の効能とは?温泉の泉質と効能を知って健康になろう

温泉大国、日本。
天然温泉が好きで温泉巡りが趣味という方も少なくないでしょう。
浴場で温泉成分や効能について書かれた掲示を見たことはありませんか?
健康への近道である天然温泉の効能について詳しく解説します。

【目次】
・温泉が体にいい2つの理由
・天然温泉の泉質と適応症を詳しく解説
・天然温泉で健康になろう

 

温泉が体にいい2つの理由


温泉が健康に良いとされる理由は2つあります。
・水圧、浮力、温熱による物理的作用が働く
・温泉成分による化学的作用が働く

化学的作用とは、天然温泉にふくまれる成分によって得られる働きのことです。
天然温泉は地域によって鉄や二酸化炭素など様々な成分がふくまれ、成分によって得られる働きも異なります。
詳しくは泉質と適応症についての項目で解説します。
まずは、物理的作用とはどのようなものなのかを詳しく見ていきましょう。

 

◆入浴による物理的な作用

温泉に入ることで得られる物理的な作用には以下の3つが挙げられます。
・水圧
・浮力
・温熱

お湯につかると体に水圧がかかって血管が圧迫されたり、横隔膜が押し上げられて呼吸数が増えたりすることで、全身の血の巡りが良くなります。

また、水中では浮力を受けて体が軽くなります。
体を支えるために硬くなった関節やこわばった筋肉もほぐしやすく、心も軽くなったようなリフレッシュ気分に。

そして、温泉につかって体が温まると血管が広がって血行が良くなり、新陳代謝や体内の老廃物排出がうながされます。

さらにこのほかに、温泉地や温泉施設へ行って入浴すること自体が気分転換になり、心身ともにリラックスすることもできます。

 

◆湯治も現代版にアップグレード?

湯治(とうじ)とは、温泉地に1~4週間ほど滞在して療養を行う古くからの方法ですが、忙しい現代ではそんなに長い期間の滞在をするのは簡単ではありません。
そこで「新・湯治推進プラン」として、「期間よりも質」といえるような現代版湯治のプランが環境省のウェブサイトに掲載されています。
内容は各地の泉質を活かしたプログラムや外湯めぐりの充実など温泉地を楽しむ工夫、温泉療養の科学的根拠の発信など。
今後、新たな湯治スタイルが確立されていくかもしれませんね。

 

天然温泉の泉質と適応症を詳しく解説


温泉の物理的作用については説明しましたが、ここからは化学的作用、つまり泉質と適応症について詳しく紹介します。
温泉の定義についても見ていきましょう。

温泉とは、
・地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、温度が25℃以上
・25℃未満であっても、指定された物質(成分)が一定量以上ふくまれる
のいずれかを満たすものを温泉と呼ぶと、温泉法によって定められています。

 

◆泉質とは?

泉質(せんしつ)とは温泉水の性質のことで、天然温泉にふくまれる物質(成分)によって色や匂い、味、肌触り、pHなどに違いがあります。
お湯が赤褐色をしている、硫黄臭がする、とろりとした肌触りをしているなどの特徴は、天然温泉がそれぞれ持っている泉質による特徴です。

また、温泉の中でも特に治療に適しているものを療養泉と言います。
療養泉は、
・源泉から採取されるときの温度が25℃以上
・指定された物質(成分)のいずれか一つが一定量以上ふくまれる
と定義されています。

療養泉はふくまれる成分とその含有量によって10種類に分類されます。
ちなみに天然温泉についての定義はありませんが、人工的に温泉成分を加えた「人工温泉」は療養泉の定義にあてはまらないため、療養泉=天然温泉と考えてよいでしょう。

 

◆天然温泉の効能と適応症

適応症とは、天然温泉(療養泉)での温泉療養を行ってもよい心身の病気や症状のこと。
適応症には、どの泉質でも効能が期待される「一般的適応症」と、泉質ごとに異なる「泉質別適応症」があります。
また、泉質別適応症は入浴することで効能が表れる「浴用」と、温泉水を飲むことで効能が表れる「飲用」に分けられます。

飲用する場合は専門知識を有する医師の指導のもとに行うことや、衛生面に気を付けることなどの注意が環境省から出されています。
浴槽の温泉水は飲用目的ではないので、飲んではいけません。
各都道府県から飲用の許可を得た温泉の飲泉場といった決められた場所で飲むようにしましょう。

適応症がある一方、温泉に入ることや温泉を飲むことで体に悪影響を与える可能性のある病気や症状を指す「禁忌症」もあります。

禁忌症の例は、急性疾患(特に熱がある場合)、出血時、妊娠(特に初期と末期)、高度の貧血、重い心臓病、重い腎臓病、悪性腫瘍など。
なお、これらの禁忌症にあてはまる方でも、医師の指導のもとであれば温泉療養をすることができるケースもあります。
温泉療養の知識を持つ温泉療法医とかかりつけの医師に相談してみましょう。

 

天然温泉の泉質と適応症


天然温泉には、どの泉質でも効能が期待される一般的適応症があります。
一般的適応症はとても幅広く、筋肉痛、関節痛、神経痛、冷え性、軽い喘息、胃腸機能の低下、軽症の高血圧、ストレスによる諸症状、疲労回復、健康増進など。

さらに、天然温泉の泉質はふくまれる成分によって10種類に分けられ、それぞれ異なる特徴と適応症を持っています。

 

◆単純温泉

肌あたりが優しいため、刺激が少ないのが特徴です。
pH8.5以上の単純温泉は「アルカリ性単純温泉」と呼ばれます。
マイルドなお湯なので、お年寄りや肌の弱い方に特に向いているとされます。

【ふくまれる成分】
温泉水1kg中、溶存成分(ガス成分を除く)が1000mg未満、源泉温度は25℃以上
【入浴の適応症】
自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
【飲用の適応症】
なし

 

◆二酸化炭素泉

炭酸の泡が体に付くのが特徴ですが、加温すると炭酸が抜けることもあります。
炭酸ガスの働きで保温が長持ちするとされています。

【ふくまれる成分】
温泉水1kg中、二酸化炭素が1000mg以上
【入浴の適応症】
切り傷、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
【飲用の適応症】
胃腸機能低下

 

◆炭酸水素塩泉

「美人の湯」といわれることが多い泉質です。
皮膚の角質を柔らかくしてきれいにする作用があるとされています。

【ふくまれる成分】
陰イオンの主成分が炭酸水素イオン
【入浴の適応症】
切り傷、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
【飲用の適応症】
胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、糖尿病、痛風

 

◆塩化物泉

塩分が主成分のため、なめると塩辛いのが特徴です。
肌に塩分が付いて入浴後の発汗をおさえるため、保温が長持ちするとされています。

【ふくまれる成分】
陰イオンの主成分が塩化物イオン
【入浴の適応症】
切り傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
【飲用の適応症】
萎縮性胃炎、便秘

 

◆硫酸塩泉

切り傷や火傷によいとされ、古くから「傷の湯」といわれる泉質です。
飲むと胆のうを収縮させ、腸のぜん動を助ける働きがあるとされています。

【ふくまれる成分】
陰イオンの主成分が硫酸イオン
【入浴の適応症】
切り傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
【飲用の適応症】
胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘

 

◆含鉄泉

湧出したときは無色透明ですが、空気に触れると鉄分が酸化して赤褐色になる特徴を持ちます。
飲むことで鉄欠乏性貧血に良い影響があるのは含鉄泉だけです。

【ふくまれる成分】
温泉水1kg中、鉄Ⅱイオンまたは鉄Ⅲイオンが合計で20mg以上
【入浴の適応症】
一般的適応症
【飲用の適応症】
鉄欠乏性貧血

 

◆硫黄泉

硫黄特有の腐った卵のような匂いが特徴です。
殺菌力が強く、皮膚疾患に適しているとされています。

【ふくまれる成分】
温泉水1kg中、硫黄が2mg以上
【入浴の適応症】
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症
【飲用の適応症】
糖尿病、高コレステロール血症

 

◆酸性泉

「皮膚病の湯」とも呼ばれ、皮膚症状が適応症となっている泉質です。
殺菌力が強いですが刺激も強く、肌に残った温泉成分で肌があれることもあるため、湯上りにシャワーを浴びるとよいでしょう。
【ふくまれる成分】
温泉水1kg中、水素イオンが1mg以上
【入浴の適応症】
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、表皮化膿症、糖尿病
【飲用の適応症】
なし

 

◆含よう素泉

非火山性の温泉によく見られ、時間が経つと黄色く変色するのが特徴です。
飲むと総コレステロールを抑制する働きがあるとされています。

【ふくまれる成分】
温泉水1kg中、よう化物イオンが10mg以上
【入浴の適応症】
一般的適応症
【飲用の適応症】
高コレステロール血症

 

◆放射能泉

ラドンという放射性物質を微量ふくむ泉質で、「ラジウム泉」ともいわれます。
放射能と聞くと怖いイメージを持つかもしれませんが、微量であれば健康に問題はありません。
実際、放射能泉の放射線量は、レントゲン撮影時に浴びる放射線量よりもさらにずっと少ないので安心して入浴を楽しみましょう。

【ふくまれる成分】
温泉水1kg中、ラドンが30×10^(-10)Ci(8.25マッヘ)以上
【入浴の適応症】
痛風、関節リウマチ、強直性脊椎炎
【飲用の適応症】
なし

 

天然温泉で健康になろう


天然温泉の効能と適応症について紹介しました。
天然温泉には様々な泉質があり、効能も実に様々。
ご自身に合う泉質の温泉を探して、温泉巡りをするのも楽しいかもしれませんね。
効能に着目して温泉を選ぶときの参考にしてみてはいかがでしょうか。